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東京地方裁判所 平成5年(ワ)13828号 判決

原告

山下研二

山下夏恵

右両名訴訟代理人弁護士

國生肇

原告

飯塚昭

右訴訟代理人弁護士

鈴木宏明

原告

花澤義夫

右訴訟代理人弁護士

小川秀史郎

波多野健司

被告

株式会社西方ゴルフ倶楽部

右代表者代表取締役

中島成雄

右訴訟代理人弁護士

高山征治郎

山本治雄

東松文雄

亀井美智子

中島章智

枝野幸男

主文

一  原告らの各請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、原告山下研二及び同山下夏恵に対し、それぞれ九八五万四〇〇〇円及びこれに対する平成五年八月二七日から支払済みまで年六分の割合による金銭の支払いをせよ。

二  被告は、原告飯塚昭に対し、一八一〇万五〇〇〇円及びこれに対する平成五年一〇月一九日から支払済みまで年六分の割合による金銭の支払いをせよ。

三  被告は、原告花澤義夫に対し、一三〇七万五〇〇〇円及びこれに対する平成二年七月五日から支払済みまで年六分の割合による金銭の支払いをせよ。

第二  事案の概要

本件は、建設途上にあるゴルフ場施設を開場後会員として利用するため、その経営主体である被告とゴルフ倶楽部への入会契約をし、被告に預託金を支払った原告らが、ゴルフ場の開場が予定より大幅に遅れたのは債務不履行である等として、入会契約を解除し、預託金等の返還を求めるものである。

一  当事者間に争いのない事実等

1  被告は、ゴルフ場の経営等を業とする株式会社である。

2  被告は、栃木県上都賀郡西方村大字真名子字男丸地区に所在する土地(面積九八万二八〇〇平方メートル)にゴルフコース一八ホール、クラブハウス一棟その他の施設からなるゴルフ場を建設し、これを西方ゴルフ倶楽部として運営することを計画し、現に同ゴルフ場を建設中である。

3  原告山下研二及び同山下夏恵は、平成二年六月二二日それぞれ被告と西方ゴルフ倶楽部への入会契約を締結し、同日それぞれ入会金一八五万四〇〇〇円(うち消費税五万四〇〇〇円)及び預託金八〇〇万円を支払った。

4  原告飯塚は、平成二年八月二八日入会金三六〇万五〇〇〇円(うち消費税一〇万五〇〇〇円)及び預託金一四五〇万円を支払って、工事完成は平成四年一〇月の予定であるとの約定の下に被告と同ゴルフ倶楽部への入会契約をした。

5  原告花澤は、平成二年六月被告と同ゴルフ倶楽部への入会契約を締結し、同年七月四日までに又は同年八月六日に入会金二五七万五〇〇〇円(消費税を含む。)及び預託金一〇五〇万円を支払った。

6  原告山下研二及び同山下夏恵は、被告に対し、平成五年八月二六日に送達された本件訴状をもって、ゴルフ場工事の完成が遅延していることが債務不履行であるとして本件入会契約を解除する旨通知した。

7  原告飯塚は、被告に対し、平成五年八月二八日到達の書面をもって、ゴルフ場の工事の完成が二年も遅滞するのは契約違反であるとし、本件入会契約を解除する旨通知した。

8  原告花澤は、被告に対し、平成五年一一月一日到達の書面をもって、ゴルフ場の未開場は債務不履行であるとして、本件入会契約を解除する旨通知した。

二  争点

1  本件ゴルフ場の完成予定時期、開場予定時期はいつであり、実際にはいつ完成し、開場する見込みであるか。

2  本件ゴルフ場の開場の遅延は、入会契約の債務不履行として、同契約の解除事由となるか。

三  争点に関する原告の主張

1  ゴルフ倶楽部入会契約において、ゴルフ場の開場時期は、最も重要な内容である。

2  本件入会契約においては、ゴルフコースとクラブハウスを平成四年一〇月に完成させ、平成五年春にオープンするという約定であった。その後被告は、開場時期を、平成五年九月完成、平成六年秋完成、平成七年春完成、同年春(六月)仮オープンと数回延期している。平成六年一二月一六日現在において、いまだゴルフコースの工事も完成しておらず、その開場時期は不明であるというべきである。被告側の説明によれば、ゴル倶楽部の顔ともいうべきクラブハウスは、平成六年一〇月に着工したとのことであり、通常のこの建物の工事期間として一年二ヵ月から一年六ヵ月を要するところからすると、平成七年三月までにこれが完成するかどうかは甚だ疑わしい。仮に被告主張のように社会通念上相当として是認される程度の開場の遅延は許容されるとの暗黙の合意があるとしても、その遅延は数カ月か或いは最長一年未満であって、本件ゴルフ場の開場の遅延は許容の程度を越えている。原告らの投下資本は小額なものではないから、これを他に運用すれば相当な利益を上げ得る。被告は、個々の者にとって多額の資金を多数から無利息で集めながら、複数年にわたり無利息で運用でき、多数会員のみがその不利益を甘受するような暗黙の合意は存しない。

3  被告は会員を募集し、多額の預託金の提供を受ける以上、工事期間の予測について必要な事項は既に準備し、解決しておくべきである。

被告が遅延理由として挙げるうちの岩盤の量と硬度、土岩比、土量変化率、地形等は、必ずしも予測のできない障害として、工事期間の予測に当たって当然計算に入れられるべき事項である。また、当初の見通しとの相違が著しい場合には、それは事前調査自体に不備や不足があったことによるものであって被告はその事前調査を尽くしていなかったものというべきである。

被告が遅延理由として挙げるうちの西方村による取付道路拡張工事の遅延及び調整池地権者との契約の難航は、工事期間を予測し、会員を募集にするについて当然解決していなければならない事項である。これらが解決できないのは、被告の準備不足、不手際、交渉不足等に基づくものであって、開場の遅延を正当化できるものではない。調整池の敷地は長期の使用が予測されるのに、初めから期間を一年とした賃貸借契約を締結したことなどは、被告の不手際を如実に示すものである。

4  被告が、本件ゴルフ場の完成予定を平成五年秋とする西方ゴルフニュースを会員に送付したことだけによって、被告と原告らとが本件ゴルフ場の完成時期を平成五年秋と変更する合意をしたことになるものでないことは当然である。

5  被告は、二カ所のゴルフ場を手配していると主張するが、原告花澤にそのような手配がされたことはない。仮にそのような手配があったとしても、同原告は既に茨城ゼネラルカントリー倶楽部の会員である。岩手県に所在するゴルフ場は東京在住の者にとって極めて交通不便であって、都心からわずか六〇分でクラブハウスに到着すると宣伝している本件ゴルフ場の代替施設になるものではない。

四  争点に関する被告の主張

1  被告が、入会契約を締結する者に平成四年一〇月完成予定と告知したことはあるが、これはあくまでも予定である。工事完成は遅延しているが、それは村営事業である取付道路工事の遅延その他不測の事態によるもので、被告の責任によるものではない。被告は、平成四年三月原告らを含む西方ゴルフ倶楽部会員に対し、本件ゴルフ場が平成五年秋完成予定である旨を通知した。したがって、この時点で、原告らと被告との間においては、「平成五年秋完成予定」とされたものということができる。現実には工事は平成六年二月二八日現在において66.5%進捗しており、遅くとも平成七年三月には完成する見通しである。その遅延はなお許容限度内である。

2  ゴルフ場の建設には広大な用地と莫大な資金とを必要とし、法令上の制約も多く、用地の買収や行政庁の許可の獲得に相当長い期間が必要であることは一般に周知のことであり、その間に種々の事情の変化が生ずるおそれもあるため、そのオープン予定時期を事前に確定することは容易なことではなく、企業主体が定めたオープン予定時期についても多少遅延があり得ることは入会者の方でも当然予想されるところである。したがって、ゴルフ入会契約には、社会通念上相当として是認される程度の遅延はこれを許容し、その期間内は履行遅滞の責任を問わないとの暗黙の合意が含まれていると解すべきである。本件入会契約についても、その遅延は未だ社会通念上是認される程度のものというべきである。

3  仮にゴルフ場のオープンの遅延が許容される相当期間を越えているとしても、①それがゴルフ場経営会社の責めに帰することができない場合、②継続的契約である入会契約の存続を著しく困難とするやむを得ない事由が存しない場合、③継続的契約である入会契約において契約関係の維持を困難にする程に信頼関係が破壊されていない場合、④解除の意思表示が権利の濫用に当たる場合等には履行遅滞に基づく入会契約の解除は認められるべきではない。

本件ゴルフ場の完成が予定より遅れているのは、以下の理由によるものであって、これを被告の責めに帰することはできない。

(一) 西方村による取付道路拡張工事の遅延

本件ゴルフ上の取付道路(西方村道三三二〇号線)については、都市計画法の基準から幅員6.5メートル以上を要するところ、もともと幅員が二、三メートルしかなかった右取付道路約一一〇メートルが拡幅された後に重機を搬入して本件ゴルフ場建設に着工する予定であった。右拡幅工事は平成六年六月の時点で西方村が単独事業として行うことが確認されていた。しかるに西方村の拡幅工事は平成三年九月完成と大幅に遅延した。

(二) 地質・地形

被告は、本件ゴルフ場建設工事への着工前に地質について充分な調査を行ったが、実際に工事を進めたところ、岩盤の量と硬度が予測を上回るものであったため、発破工事に予定より多く時間を費やした。また以下のとおり土岩比等について、当初の見通し(栃木県知事から工事の許可を受けた時点)と次のように相違することが判明した。この相違は予見不可能であった。

(1) 土岩比

(硬岩)(軟岩)(土砂)

当初見通し

三五% 四〇% 二五%

判明した比率

四〇% 三八% 二二%

(2) 土量変化率(土岩が掘り起こす前の状態から掘り起こした状態になるときの体積の膨張率)

当初見通し  1.3

判明した比率 1.07

(3) 地形

事前に作成された航空測量図に基づく地形と現実の工事により判明した地形とで四mから七m程度の相違があり、全般的に谷部が深くなっていたため、盛土量が当初予定より多く必要となり、その結果切土量も増加した。

(4) 以上による切土および盛土量の増加

(切土)  (盛土)

当初見通し

二、九三五、〇〇〇m3

三、八一六、〇〇〇m3

必要となった量

三、六五三、〇〇〇m3

三、九〇九、〇〇〇m3

(5) 以上による火薬使用量の増加

当初の見通し 二二六、五七五kg

必要となった量 三四五、三一〇kg

(三) 設計変更

ゴルフ場の建設について世間一般から厳しい目が向けられるようになり、防災上の安全性や自然環境の保護の見地から、また、右(二)のような予測の変更のあったことから、一部設計変更を余儀なくされた。

(四) 調整池工事の遅延

本件ゴルフ場の調整池の用地は借地であったところ、土地所有者から賃貸借契約更新に際して賃料の値上げと区域外の多大の補償工事に応じなければ契約更新を拒否すると通告され、調整池工事の着工が遅延した。

4 本件においては、次のとおり契約を存続することを困難とするやむを得ない事由が存在しない。すなわち、被告は、原告を含め西方ゴルフ倶楽部会員のプレーに支障がないように被告の関連会社が経営する茨城カントリークラブ(茨城県那珂郡大子町所在一八ホール)及びグランデール久慈カントリークラブ(岩手県九戸郡大野村所在一八ホール)において会員待遇でプレーできるように手配しており、現に多くのクラブ会員がこれらクラブ場でプレーをしている。

万一原告らの請求が認められることになれば、被告としては、ほとんどの会員に対して預託金や入会金を返還せざるを得ない事態となり、一挙に一〇〇億円以上の支出を強いられる結果被告は倒産せざるを得ず、一部の会員のため残りの大多数の会員は会員権を失うことになる。本件ゴルフ場は間もなく完成する見通しであり、被告は、会員のプレーに支障がないよう手配しているから、本件会員契約の解除が認められないことによる会員の不利益は僅かなものであるが、解除が認められれば被告は倒産のやむなきに至り、他の会員も著しい不利益を被る結果となる。これらの事情を考え併せれば、本件会員契約の存続を著しく困難とするようなやむを得ない事由は存在しないものというべきである。

第三  争点に対する判断

一  未だ開場していないゴルフ場について設置されるゴルフ倶楽部に入会する者は、既に開場しているゴルフ場のゴルフ倶楽部へ入会するより割安に会員資格が得られるからこそそのような早期に入会することを選択するものであるから、そのような選択をする者にとっては、何時からそのゴルフ場でプレーすることができるようになるのかすなわち開場の時期がいつになるのかは、その主要な関心事であり、そのことは入会契約の重要な内容をなすものというべきである。

第一八〇六七号事件甲一号証によれば、被告は、縁故会員を募集するに当たり、そのパンフレットに着工日を平成二年六月(予定)と、完成予定を平成四年一〇月(予定)と記載していたことが認められる。この完成時期の記載は、予定としてされているが、事柄の性質上予定であることはいうまでもないことであるから、入会契約における完成時期は、平成四年一〇月からそれ程遅くない時期と設定されたものと認めるべきである。開場時期については、建設予定のゴルフ場において、工事が完成し、施設が用意されても、なお開場にはある程度の期間を要すると考えられ、その期間は、整備に通常要すると考えられる期間と、会員の早い開場への期待とを考慮すれば、長くとも半年であると認めるのが相当であろう。そうすると、本件各入会契約上本件ゴルフ場の開場時期は平成五年四月からそう遠くない時期とされたものと認められる。そう遠くない時期というのも程度概念であるが、一般に六ヵ月を超えれば、遠くない時期とはいえないと考えられるから、遅くとも平成五年一〇月開場というのが当初の契約内容であったと認めるのを相当とする。

二  本訴口頭弁論終結時において、本件ゴルフ場はまだ工事完成にも至っていないから、被告は、本件各入会契約における適時の開場義務を怠っており、その意味で被告には債務不履行があるというべきである。

原告らの中には、平成五年一〇月以前に入会契約を解除した者もあるが、その解除の時期には、本件ゴルフ場が平成五年一〇月に開場できないことが明らかになっていたと認めることができるから、通常の契約法理に従えば、原告らはいずれも本件入会契約を解除することができることとなる。

三  しかしながら、ゴルフ場の建設は、広大な土地を開発する事業であり、関係する地権者も多数に上るうえ、各種許認可を要するなど法令上の制約も多く、地方自治体との協力や共同作業が不可欠である等事業者の努力のみでは解決できないような事項も含むため、その事業の遂行過程において予測の範囲を越えるような事態が発生して、見込みよりも相当程度開場が遅れることのあり得ることは通常見込まれることであって、未だ開場していないゴルフ場についてのゴルフ倶楽部に入会しようとする者もその点は斟酌しているものとみるべきである。また、倶楽部という団体がその会員に提供するのは、上質なスポーツの場であり、また一つの社交の場でもあって、会員は、その会員となることにより他の会員と共に一つの運命共同体を形成しつつ、その倶楽部における余暇を楽しむものであり、このような選択は生活に余裕があるからこそすることができるものである。未だ開場しないゴルフ場についてゴルフ倶楽部の会員となる者は、そのような倶楽部ライフを将来楽しむため予め資本を投下したのであるから、真摯な努力をもってゴルフ場を建設し、開場しようとしている主宰者に対しては、以上のような倶楽部会員としてふさわしい寛容の精神で臨むべきであって、相当程度の開場の遅れは、これを許容すべきであり、これを理由としては、入会契約を解除することはできないものと認めるべきである。

四  これを本件についてみると、本件ゴルフ場の建設については、次の事実を認めることができる(甲ハ一、乙一の一から九まで、乙七から乙二一まで、乙二三から乙二六まで、乙三〇、乙三一、乙三二の一から一一まで、乙四〇、乙四一の一から三まで、証人根本浩)

1  本件ゴルフ場の取付道路となる西方村道三三二〇号線は、元々幅員が二、三メートルのものであったが、これを取付道路とするには都市計画法上幅員が6.5メートル以上なければならないため、村道の拡幅工事が必要となった。ゴルフ場の建設に必要な重機は、その拡幅ができた後にその道路を使って搬入する予定であった。この拡幅工事は、平成元年六月西方村が単独事業として施行することとなったが、用地買収において地権者が公共買収費では買収に応じないとして難航し、同村の拡幅工事着工が平成三年九月と大幅に遅延した。このため、本件ゴルフ場建設工事が約一年間遅延した。

2  本件ゴルフ場用地の地質は、岩盤が予測をはるかに上回る量と硬度であったため、発破工事に予定より三ヶ月多く時間を費やした。

3  栃木県知事から工事の許可を受けた時点の事前調査に基づく当初見通しでは、本件ゴルフ場用地の土岩比を、硬岩三五パーセント、軟岩四〇パーセント及び土砂二五パーセントと予測していたが、実際にはこれらが、それぞれ四〇パーセント、三八パーセント及び二二パーセントであることが判明した。また、当初見通しでは、土量変化率(土岩が掘り起こす前の状態から掘り起こした状態になるときの体積の膨張率)を1.3と予測していたが、実際にはこれが、1.07であることが判明した。次に、事前に作成された航空測量図に基づく地形と現実の工事により判明した地形とでは四メートルから七メートル程度の相違があり、全般的に谷部が深くなっていたため、盛土量が当初予定より多く必要となり、その結果切土量も増加した。これら予測値の変更により、切土および盛土量が、当初見通しでは、切土が二九三万五〇〇〇立法メートル、盛土量が三八一万六〇〇〇立法メートルとしていたが、実際には、前者が三六五万三〇〇〇立法メートル、後者が三九〇万九〇〇〇立法メートル必要となった。火薬使用量も当初の見通しでは、二二万六五七五キログラムとしていたが、実際には三四万五三一〇キログラム必要となった。実質的には、以上のような予測値の変更のため、形式的には、防災上の安全性や自然環境の保護という理由から、本件ゴルフ場の設計変更を余儀無くされ、その変更について栃木県との協議に約六ヵ月を要し、工事期間も約六ヵ月延長した。

4  本件ゴルフ場の調整池の用地は借地であったところ、土地所有者から賃貸借契約更新に際して賃料の値上げと区域外の多大の補償工事に応じなければ契約更新を拒否すると通告され、調整池工事の着工が遅延した。その遅延の程度は約六ヵ月であった。

5  本件ゴルフ場の建設工事は、以上のような遅延は見たものの、着々と完成に向かっており、平成七年一月一三日に建設主体である株式会社鴨川ゴルフアンドカントリー倶楽部が栃木県知事に提出した工事進捗状況報告書(乙四〇)によれば、仮設道路工事(仮設進入道路、仮設事務所等)の進捗率は八五パーセント、伐採除根工事完了、防災工事(土砂流出防止、盲暗渠等)の進捗率は99.8パーセント、進入道路工事は石積み、側溝が完了しその進捗率は七二パーセント、調整池工事、擁壁工事及び整地工事(切盛土工及び表土除去工)はいずれも完了、雨水排水工事の進捗率は九四パーセント、張芝工事の進捗率は92.5パーセント、管理道路中路床及び路盤工の進捗率は8.4パーセント、植栽工事の進捗率は56.8パーセント、構造物工事は進入道路石積工、土留擁壁工及び受水槽構築工が完了し、その進捗率は94.5パーセント並びに全体(各ホールの植栽工、張芝工、管理道路路盤工、浄化槽工事)の進捗率が85.6パーセントとなっており、このまま推移すれば、ほぼ平成七年春にはゴルフ場の仮オープン(おおむね会員のみプレーすることができる状態でのオープン)にこぎつけられる見通しである。

五  以上の事実からすれば、本件ゴルフ場は遅くとも平成七年四月頃には仮オープンするものと認められる。前記の入会契約上の開場時期からすると、一年半程遅れることとなるが、以上みたとおり、その遅延の主な原因は、建設主体ではない西方村の道路拡幅工事の遅延にあり、その他の遅延の原因も、そのほとんどが、山間部における開発に伴う予測の困難性から生じたもので、必ずしも建設主体に責任があるとはいえないものである。そうであるとすれば、被告は、真摯な努力をもってゴルフ場を建設し、開場しようとしているものであり、現にゴルフ場は、一年半程度遅れるものの開場されるものと予測されるから、原告らは、倶楽部会員としてふさわしい寛容の精神をもって、その程度の開場の遅れは、これを許容すべきである。

六  そうすると、被告の債務不履行は、未だ解除権を発生させる程に重大なものとなっておらず、原告らは、本件ゴルフ場の開場の遅れをもって、その各入会契約を解除することはできないものというべきである。

第四  結論

よって、原告らの各請求は、いずれもこれを棄却するものとする。

(裁判官中込秀樹)

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